支払いを拒否したい! 死んだ父親の借金について
Q.
実家の父が亡くなったのですが、多額の借金を残していたことが亡くなってから分かりました。母も父の借金のことはまったく知らされておらず、突然取立てが来て驚いています。
子どもは私1人で母は年金暮らしです。父の財産は両親が住んでいた家とその土地ぐらいで、預貯金はないようです。家と土地を売却しても、借金がすべて返済できるか微妙なところです。
借金は私が引き継がなければならないのでしょうか? 相続を放棄すれば借金を引き継がなくてもよいと聞きましたが、どのような手続きが必要ですか。
(58歳 男性)
A.
相続には「単純承認」「相続放棄」「限定承認」という選択があります。
単純承認とは相続財産のすべてをそのまま相続することで、プラスの財産もマイナスの財産もすべてを相続することです。逆に相続放棄とはプラスの財産もマイナスの財産も何一つ相続しないというもの。そして限定承認とは相続によって得た財産の範囲内においてだけ、債務返済の責任を負うというものです。
相談者は家と土地を売却しても、借金がすべて返済できるかどうか微妙なところ、ということですから“微妙”な状況にあった相続を考えなくてはなりません。
家と土地を売却して借金を支払ったらお金が少し残るかもしれないし、逆に借金の方が残るかもしれない。両方の可能性があるわけですから、お金が残った場合だけ受け取り、借金に関しては自分の財産を持ち出してまで弁済しない、という「限定承認」をすることをおすすめします。
「限定承認」はお父さんが亡くなって3カ月以内に、故人が生前住んでいた家庭裁判所に限定承認伸述書を提出して手続きします。
3ヶ月以内に申請するというのは限定承認も相続放棄も同じなのですが、「相続放棄」は相続人1人でできるのに対して「限定承認」は、相続人全員で手続きをしなければなりません。今回の場合は相続人が相談者とお母さんなので、2人で「限定承認」の手続きを行います。誰か1人が相続を放棄した場合は、残りの相続人で手続きを行うことになります。
・限定承認の手続きは3カ月以内に行うことが大切
ここで大切なことは、亡くなってから必ず3ヵ月以内に、「限定承認」の手続きをとることです。悲しみに浸っていたり財産目録を作ったり、と3カ月という期間はあっという間です。何もしないで3カ月たってしまうと、単純承認したとみなされてしまうので注意しましょう。
住み慣れた家や土地を売却するかどうかを決断したり、その価値を不動産屋に鑑定してもらうにしても、それ相応の時間がかかります。どういう結論を出すにしても、とりあえず限定承認の手続きをしておき、その後でじっくり話し合い、結論を出すとよいでしょう。
特に亡くなったお父さんが、誰かの保証人になっている可能性がある場合、内緒で借金をしているかもわからない場合は、「限定承認」の手続きをとっておくことが賢明です。
というのも保証人になっていることでかぶる借金は、亡くなってずいぶん時間がたってから、わかるケースがあるからです。またお金の貸主が相続放棄をされないように、故意に3カ月間借金のことを知らせないこともあります。そうした場合、3ヵ月が過ぎていると、今更「限定承認」の申請もできないし、「相続放棄」もできない、ということになります。資産や借金の状況がよく分からなくても、とりあえず「限定承認」の申請をしておくことをおすすめします。
・財産の有無多少に関わらず限定承認すると安心
ところで、相談者のように土地や建物といった資産がある場合は、相続について考えざるをえないのでよいのですが、特に見るべき資産がない場合は、何の心配も対策も講じないのが普通だと思います。ところが突然借金だけが後になって発覚する、ということもあるのです。
そういう場合は、借金があるということがわかってから、あるいは保証人になっているということがわかってから3カ月以内に相続放棄をすればいい、という最高裁の判例が出ています。
さらに問題なのは家や土地などを相続し、その後になって家や土地の価値を上回る借金が出てきた場合です。最高裁の判例は、見るべき資産がないのに借金だけが出てきた、という場合の判例のみで、多少財産はあったけど、それより全然借金のほうが多かった、という場合に適応されるかどうか、というのは今のところはっきりしません。
いずれにしても財産の有無・多少に関わらず、故人がお人好しで、誰かの保証人になっているかもしれない場合は、とりあえず限定承認の手続きをしておくとよいでしょう。