友人と立ち上げた会社でのトラブル
出資したお金が戻らない
Q.
定年後、知人と会社を立ち上げました。
会社の業務内容はその知人の人脈を使った広告代理店でしたが、私は退職金の中から2000万円を出資し、取締役になりました。利益もあがり順調だと聞いていたのですが、突然会社は閉鎖され解雇されてしまいました。取締役になっていたはずですが、口約束だけで決めたことで書類がありません。
出資したお金は会社の運営や今まで支払った給料でなくなってしまったので返せないといわれました。どうしたらよいのでしょう?
(62歳男性)
A.
長年勤め上げた会社を辞めた後、友人や親戚と一緒に新しく会社を立ち上げる、という話はよくあることです。でも結局うまくいかず、トラブルになってしまうケースも少なくありません。
相談者の場合は、まず出した2000万円が、どういう性質のお金だったかを確認する必要があるでしょう。会社発起人の1人として出資したというのであれば、会社設立後は株主になっているはずです。株主名簿を見て確認しましょう。
もし株主になっていなければ、2000万円は会社への出資金ではなく友達にお金を預けただけ、ということになります。あなたが2000万円出したときの領収書はありませんか? お金が友達に預けた預託金であるということが証明できれば、それを返して欲しいと返還請求することができるでしょう。
ただし、相談者が株主であり取締役に名を連ねている場合は、会社が閉鎖され倒産しているのなら出資金はまず戻ってきません。
閉鎖されたということは順調に見えた経営が、実は順調ではなく債務超過になっているのでしょうから、お金は戻ってこない確立のほうが高いのです。
債務超過でなく、財産が残っているのに閉鎖したということであれば、自分の出資割合に応じて財産で返して欲しい、ということはできると思います。
いずれにしても2000万円が会社に出資したお金なのか、友達に預けたお金なのか、それをはっきりさせることが大切ですね。
・出資金の私物化で刑事告訴することも
もし友人が「2000万円出資してくれ」と頼んでおきながら、あなたの名前が株主名簿にのっていないのであれば、最初から騙す目的で話を持ちかけられた可能性があります。会社として稼動しているように見せかけながら、実は会社設立の手続きや登記すらしていなかったのかもしれません。そうした詐欺行為を立証するのはなかなか難しいのが現実です。
会社が順調なのに突然閉鎖されたのであれば、それ自体がとてもおかしなことです。じゃ、お金はどこに行ったかということになります。友達が裏でお金を私物化していたのかもしれません。
そういった場合は特別背任罪や横領で刑事告訴できる可能性もあります。立証は極めて難しいですが、場合によっては「刑事事件になったら困るからお金は返すよ」となるケースもありますので、経理状況などをよく調べてみることをおすすめします。
なお、解雇されたという件については、会社が閉鎖されたのであれば致し方ありません。
ただ、突然の倒産は即時解雇になりますので経営者は解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支給する義務があります。
相談者は「取締役になっていたはずですが、口約束で決めたことで書類がありません」ということですから、通常の従業員ということになります。従って解雇予告手当を受け取る権利があります。もしもらえなかったら、労働基準監督署に相談すれば、経営者に支払うよう指導してもらえるでしょう。
しかし、実際のところは「ない袖は振れない」として、支払われないケースが多いようです。
また未払賃金があれば、一般債券より優先して支払ってもらうように働きかけることができます。未払賃金については救済処置として労働福祉事業団の「未払賃金立替払制度」というのがありますが、この制度を利用できる事業主に関する要件は、
①労災保険の適用事業の事業主であり、1年以上事業を実施していること
②倒産したこと
の2点となります。
相談者が関わった会社は新しく設立した会社ですから、この要件を満たしているかどうか確認してみてください。
・出資の前には定款や資本金について調査を
新会社設立に関わることはやりがいのあることですが、リスクもあることを承知しておきましょう。まず新しい会社に出資する場合は、その会社の経営がうまくいきそうかどうかについての見通しをよく調べましょう。そして会社の定款がちゃんとできているかどうか確認し、自分が出資するお金の性質をしっかり把握しておくことが大切です。
株主としての出資だとすれば、資本金が全部でいくらになるのか。その資本金の中で自分の出すお金がどのくらいの割合をしめるのかを確かめます。出資金の割合が半分以上を越える場合は、経営についてかなりの意見を言うことができます。
それでも会社ですからつぶれるときはつぶれます。うまくいかない場合、お金は戻ってきません。その点をよく理解した上で、ある程度の覚悟をもって望むことが大切です。