定年後、再就職したけれど名ばかりの管理職で労働条件が約束と異なる
Q 定年退職後、知人の紹介の会社に誘われ、勤めることになりました。私が管理職の経験者であることから、部長という肩書きで迎え入れてもらえるということでした。給与や労働条件については契約書を結ばずに、口頭の約束のみでした。しかし、いざ働いてみると、部長といっても部下はおらず、仕事も上からの指示通りに働くというもので、部長とは名ばかりでした。ノルマや残業が多いにもかかわらず、管理職だからということで残業代を払ってもらうこともできません。事前に聞いていた話とはかなり異なっていると思うのですが、書面での契約ではないのであきらめるしかないのでしょうか。(63歳・男性)
口約束でも雇用条件の約束は守られるべきもの
A 労働基準法では雇い主は雇用契約を結ぶときは、賃金、労働時間、その他の条件などをはっきり相手に示さなければならない、と決まっています。それは口約束であろうと書面での約束であろうと、約束は約束ですから守ってもらうことができます。ただ、今回の件は約束を守る、守らないというより、名前ばかりの管理職にして、時間外労働をさせても割増賃金を払っていない点に問題があるように思います。
最近多発している「名ばかり管理職」問題
最近この「名ばかり管理職」の問題が多発しています。
労働基準法は労働時間の限度を、原則として、1週40時間以内、かつ、1日8時間以内とし、休日を1週に1日以上与えることとしています。(労働基準法第32、35条)。そして時間外労働に関しては2割5分以上、休日労働に関しては3割5分以上の割増賃金を支払わなければならないこととなっています。
一方、労働基準法41条2号では、管理職について、「事業の種類に関わらず監督もしくは管理の地位にあるもの(以下、「管理監督者」という)または機密の事務を取り扱う者」と定義し、労働時間・休憩および休日に関する規定の適用除外者であるとしています。
つまり管理監督者に時間外割増・休日割増賃金の支払いは不要だということなのです。
この「管理監督者」を、経営者側が都合よく解釈し、十分な職務権限やふさわしい報酬を与えずに、残業代を支払わない、というトラブルが多く発生しているのです。
「名ばかり管理職」をめぐっては、日本マクドナルドの店長が訴訟を起こし、多くのメディアで取り上げられたのでご存知の方も多いことでしょう。この裁判では日本マクドナルドの店長が労働基準法上の「管理監督者」かどうかという点が争われました。そして東京地裁は、「原告店長は管理監督者でない」として、残業代と付加金の支払いを会社に命じました。
本当に管理監督者にあたるかどうかが問題
管理監督者の範囲について、行政解釈では、経営者と一体的な立場にある者の意であり、これに該当するかどうかは、名称にとらわれず、その職務と職責、勤務態様、その地位にふさわしい待遇がなされているか否かなどを考慮して判断すべきとされています。
具体的には①経営方針の決定に参画しまたは労務管理上の指揮権限を有しているか。②出来金について厳格な規制を受けず事故の勤務時間について自由裁量を有する地位にあるか否か。③職務の重要性に見合う十分な管理職手当などが支給されているか否か、などが判断の目安になります。
時間外労働を計算して会社に請求する
相談者の場合は、「部長といっても部下はおらず、仕事も上からの指示通りに動くというもの」ということですから、管理監督者の範囲ではなく、やはり「名ばかり管理職」と考えられます。
その旨を会社に伝え、今までの時間外労働を計算して請求するようにしてはいかがでしょう。もしそれでも会社側が払ってくれないようでしたら、労働基準監督署に申し出て、指導してもらうようにします。
この時点になると会社との関係はかなりこじれてしまうでしょう。しかし会社は正当な理由なくして社員を解雇することはできません。口約束の雇用だったから、定年後に雇ってもらえたら、とあきらめたり我慢したりすることはおすすめできません。