ラッシュ時に押されてケガをした
鉄道会社に補償してもらえる?
Q ラッシュ時の電車に乗ったとき、押されて転倒し、骨折してしまいました。誰に押されたのかは分からないのですが、この場合、鉄道会社に医療費の請求をすることはできますか?それとも、誰だか分からない押した人間を探して、その人に請求することになるのでしょうか?(62歳 女性)
押した人が特定できないと医療費を請求するのは難しい
A どういう状態で押されて転倒したのかにもよりますが、3つのケースが考えられると思います。
一般的にラッシュの電車の中で、降りようとしたときに後ろから押された場合は、鉄道会社には法律上の責任はないと考えるのが普通です。電車がいちじるしく混んでいた、ということについて、確かに鉄道会社に社会的責任はありますが、そのことが転倒してしまったあなたに対して「不法行為」になるか、というと難しいでしょう。
民法709条が定める「不法行為」とは、故意または過失によって、他人の権利、または法律上保護される利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う、というものです。乗客はラッシュの時間帯で満員電車だということを承知して乗っているわけですから、特別のことがない限り、鉄道会社の責任は問えないということになります。鉄道会社に医療費を請求するというのは見当違いでしょう。自分の健康保険で治療するしかありません。
どうしても医療費を誰かに請求したいのなら、押した犯人を捜し、犯人に対して請求するしかありません。もし、ラッシュ時に、故意に後ろから押して転倒させたとなれば、これは傷害罪です。ただ、後ろの人もそのまた後ろから押されたかもしれませんし、立証するのはかなり難しいでしょう。
犯人を特定するには、その場でみんな協力して犯人を捕まえ、警察に突き出さない限り、損害賠償(民事事件)も、傷害罪(刑事事件)での告訴も、なかなか難しいでしょう。
鉄道会社の職員が関わっている場合は会社に請求できる
転倒の際に鉄道会社の職員が関わっていたとなれば、状況は異なります。朝のラッシュ時など、乗客を詰め込むために、駅の職員が押すことがあります。それだけで、転倒することは普通ありませんが、中から押し返されて転倒した、圧迫されて骨折した、というようなことであれば、問題は変わってきます。もう満員でこれ以上乗せるのは無理なのに乗客を乗せたため、ケガをさせたということであれば、被害者は鉄道会社に責任を問うことができるでしょう。
この場合は、「あの状態で押し込むのはいくらなんでも無理だろう」など、目撃者の証言があり、職員が無理な押し方をしたことで転倒した、ということを証明する責任は被害者側にあります。どうやってその現場にいた人の協力を得られるかが大きなカギになりそうです。
通り魔的犯罪であれば国に損害給付金を請求できるかも
最近起こった事件のように、プラットホームで電車を待っているときに後ろから突き落とされた場合。これは明らかに殺人罪です。警察に届けて操作してもらうしかなく、鉄道会社に損害賠償を請求することはできません。
こうした通り魔的犯罪で死亡したりケガをして、加害者が見つからない場合は、「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」というのがあり、国に損害給付金を請求することができます。
損害給付金を受けられるのは、不慮の死を遂げた人の遺族(遺族給付金)、全治一ヶ月以上の重症病を負った人(重症病給付金)、後遺症が残った人(障害給付金)などで、最高額で300万円~400万円です。各都道府県の公安委員会に対して、給付金を請求します。質問者の場合にも、ケガの程度によってはこの給付金が得られるケースがあります。