遺産相続の時効について
遺産分割をしないまま20年たった
今から相続分を請求できるか?
Q 昭和63年に父が亡くなってから今年で20年になります。私達は3人兄弟で、母は一昨年、他界しました。今まで遺産分割をしないままできましたが、相続分の請求はまだできるのでしょうか?
遺産は土地と家屋で、そこに母と一緒に住んでいた長男が、土地・家屋の固定資産税などを支払ってきました。私と弟は他所に住んでいます。母が生きていたときは、その家に住んでいて欲しかったし、遺産分割でもめるのも嫌だったのでそのままにしていたのですが、今は自分のもらえる分はもらいたいと思っています。(63歳・男性)
相続権の回復や取得には20年という事項がある
A 「父親がなくなって20年たっているけれど、自分にも相続分があるはずだから、それ相応に分けて欲しい」と。長男に対して言えるかどうか、という問題ですね。20年経っているという事で、気になる点が3つあります。
1点は相続回復の請求権に関することです。民法の884条で、相続権の回復というのは、自分の相続権が侵害されたことを知ったときから、5年以内に回復の請求をしないと事項で無くなってしまいますよ、となっています。相続権の侵害をされた、ということに気づかなかった場合でも20年たったら請求できません。
しかしこの点に関しては、あまり心配する必要はないでしょう。遺産の土地・家屋に長男が住んでいた、というだけでは、まだあなたの相続権の侵害があった、とはいえないからです。長男からあなた達の権利を否定するような言動があったというならともかく、質問内容では、そのようなことがないままに現在に至っているようなので、この点に関しては大きな問題にならないと思います。
2点目は、「取得時効」について。他人のもの、あるいは他人の持分があると知っているものに対して、これは自分のものだということを表示して、平穏かつ公然に占有して20年たつと、時効により所有権を取得することができる、という法律があります。20年という天が、相談者にとって微妙なところです。しかし、これも長男が相続財産は自分のものだ、という意思表示をした、というようなことがない限り、心配しないでよいでしょう。
長男に譲るという遺言がある場合は遺産分割は難しい
3点目は遺言の有無です。父親の遺言が存在し、長男に土地・家屋を譲るとあったとしたら問題です。通常そういう場合は、遺言の存在を知ったときから1年以内に「遺留分の請求」をすれば、本来自分が相続するはずの法定相続分の半分までは取り戻すことができるのです。ところがそんな遺言の存在を知らないまま、10年以上たってしまったときは、遺留分の請求は、もはやできなくなってしまいます。
もし長男側で、遺言があることをすぐに言わずに黙っておいて、10年以上たったら、遺留分の請求権がなくなってしまうから、というやり方をしていたんだとすれば、相続分の請求は難しくなります。
普通の場合は、遺言に財産を全部譲る、などと書かれてあれば、嬉しくてすぐ言ってしまうものですが、弁護士が知恵をつけるなどして、遺言の有無を黙ってい。たりする場合も実際にはあるのです。
本来、相続がある場合は、遺言の有無の問題が大きいので、とりあえずそれを確認することが大切です。少なくとも10年以内に。10年以内であれば、知ってから1年以内に遺留分の請求をすれば、少なくとも本来相続すべき遺産の半分は受け取ることができます。
ただ相手が、遺言があるのにない、と明らかに嘘を言っていた場合は、遺留分の行使を妨げたということで、こちらに有利になる場合もあります。それにしても20年というのは放ったらかしすぎです。
結論から言うと、長男に財産を譲るという父親の遺言があった場合は、あなたに不利な結果になる可能性が強いですが、そうでなければ堂々と遺産を分割の請求をすることはできるでしょう。
まず遺言があるかどうかを確認し、もしあれば本物かどうかを確かめましょう。その上で、兄弟で遺産分割について協議し、話し合いで解決できない場合は、遺産分割の調停を起こします。
ちなみに今まで長男が支払ってきた固定資産税に関しては、長男が地代・家賃を支払わずにそこに住んでいたことと相殺されるので、そのまま長男の負担ということになるでしょう。
お母さんが存命のときに、遺産相続の話は言い出しにくかったのでしょう。しかし三回忌、七回忌くらいまでには、どんなに遅くとも解決すべきでしょう。
もうすぐお母さんの三回忌もやってくるでしょうから、その機会にお母さんの遺産のことも含め、兄弟で話し合いをすることをおすすめします。長男がお母さんの面倒を良く見ていた、ということであれば「寄与分」として、遺産の1~2割は、長男に厚めに配分されることがあります。