認知症の夫ともう暮らしたくない
亭主関白で苦労させられた夫。
最近ぼけてきて我慢できないことを言ったりしたりする。離婚は?
Q 夫は私より9歳年上の70歳です。夫は亭主関白で、私はずいぶん苦労してきました。過去には浮気を何度も繰り返し、そのたびに離婚を考えてきましたが、離婚の話を切り出す勇気がありませんでした。そんな夫が最近ボケてきて、食事をした後なのに、「お前は亭主に飯も食べさせないのか」とか、「財布の中に入れておいたお金がない。お前がとったんだろう」とか、ワケのわからないことを言うようになりました。今までずっと我慢してきましたが、もう、これ以上一緒に暮らすことができません。離婚したいのですが、可能でしょうか。また、離婚するにあたって、今後1人で生活できるように、お金ももらいたいのですが、どうすればよいでしょうか。
A 記憶力の極端な衰え、盗難妄想など、ご主人は典型的な認知症の症状だと思われます。認知症で夫婦と協力関係が保てなくなった場合、離婚が認められるかどうか、ということが今回の問題のポイントとなります。
認知症の夫との離婚は健常時よりも難しい
民法が定める離婚原因には、不貞、家族をほったらかしにして顧みない、虐待などがあげられていますが、その他に、「強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき」「婚姻を継続しがたい重大な事由のあるとき」も離婚原因に定められています。
今回のようなケースでは認知症が精神病と同じといえるかどうか、という問題があるので、後者の婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき、ということで離婚ができるかできないか判断することが多いようです。
ただ、今まで認知症などを理由に離婚が認められている判例を見ると、配偶者が介護や治療に手を尽くしているかどうか、離婚をした場合に認知症にかかっている配偶者のほうが老後、生活していける目途がたっているかどうかを認定した上で離婚を認めていて、決して簡単に離婚できるわけではありません。
結婚するときには、「病めるときも健やかなるときも、死がふたりを分かつまで、愛し慈しみ・・・」と誓うわけです。相手が病気になったときこそ助けてあげなければ、配偶者としての義務を果たしていることにならない。どっちかが先に病気になったとしても、死ぬまでの間夫婦として面倒を見て、見送ってあげるというのが公序良俗。裁判所としてはそういう考え方と調和をとる必要があるので、認知症になったから一緒に暮らしたくない。即離婚、というのを認めるわけにはいかないのです。
相談者の場合は、もともと夫側に夫婦関係を壊すような過去の責任があるとのことですが、過去の浮気問題などは、その時点では許し、婚姻関係を継続しているわけですから、それを蒸し返して独自に離婚事由にするには無理があります。
後見人をつけて夫の離婚後の生活の目途をたてる
離婚の事由に10ポイントが必要とすれば、認知症で婚姻を継続しがたい状況にあるというのが6ポイントくらい。過去の浮気や傲慢な態度のせいで、妻としてボケた夫に愛情が感じられない、というのが1~2ポイントくらい。離婚を成立させるためには、後1~ポイント必要です。そのためには、認知症の夫が今後生活をしていける目途が立てられるよう、ケアしていく必要があります。
ともかく医者の診断を仰ぎ、この夫の最善の老後は何なのか、というこ。とを主治医とよく相談しましょう。場合によっては家庭裁判所に後見人の申し立てをするとよいでしょう。
その後見人が、財産の保護をしてくれたり、裁判所と相談しながら、財産を使って施設に入る、あるいは財産がない場合は生活保護の申し立てをするなど、今後の方針を判断してくれます。後見人が客観的に福祉の観点から判断するのがよいのです。
こうして、夫の今後の生活の目途をつけてから、離婚の申し立てをすれば、10ポイント満点で比較的スムーズに離婚が認められるでしょう。
離婚に際して年金分割、財産分与の請求ができますが、夫の介護にかかる費用と離婚後の妻の生活のバランスをどうとるかが問題。こういうことも家庭裁判所の調停委員のほうからアドバイスされますが、健常者の場合より、譲歩させられる場合もあります。