ご近所とのトラブル
Q.
隣の家で飼っている猫が、うちの庭でウンチをしたり、車の上を歩いて足跡を残していくので注意したら、「うちの猫とは限らないでしょ」と逆切れされたことがありました。そんなことが以前あって、お隣との関係は前からギクシャクしていたのですが、隣の庭木の枝がウチの庭まで伸びてきて困っていました。
狭い庭なので邪魔だし、葉が落ちて雨どいに詰まるので、枝を切って欲しいと頼んでも「近々植木屋を呼ぶから」というだけで、取り合ってくれません。
何度言ってもダメだったので、私が造園業者を呼んで枝を切ってもらったところ、すごい剣幕で怒鳴り込まれました。「家を新築したときの記念樹で、とても大切にしていた木だったのにどうしてくれる。慰謝料を払え」と言われています。これは、私が悪いのでしょうか? 慰謝料を払わなければならないのですか?
(57歳 女性)
A.
ご近所とは仲良くお付き合いできるに越したことはありませんが、庭木のこと、ペットのこと、騒音のこと、境界線のことなど、何かとトラブルが多いのも現実。そして、このご近所トラブル、意外にも法律的に解決するのが難しい問題なのです。
・敷地に入りこんだ枝でも勝手に切ってはいけない
今回の相談ケース、隣の家の木の枝を切る、切らないといった問題については、民法の規定があります。民法233条では
「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その木の所有者に、その枝を切除させることができる」となっています。また「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」となっています。
これで解釈すると、隣からの木の枝を勝手に切ってはいけない、ということになります。
何度頼んでも切ってもらえない場合は、厳密に言うと裁判を起こして「枝を切りなさい」という判決をとらなければいけないのです。
それでも相手が判決に従わない場合に初めて、代替執行といって、こちらで執行官の人を連れて行って枝を切り、その費用を相手に請求します。
火事などの緊急時の場合以外は、このような法律的な手続きを踏むことが必要で、これは民法の原則として言われている「自力救済の禁止」にあたるのです。本当に気の毒ですが、法律的には相談者の方に非があることになります。
ちなみに、民法上では隣家から自分のところの敷地に伸びてきた枝についている柿の実や栗の実を採るのもNG。お隣の竹林から我が家の敷地に生えた筍は、採ってもOKということになります。
・慰謝料は不要。賠償は財産的価値の損失で図る
ただ先方が請求する慰謝料については、支払う必要はないと思われます。
慰謝料とは本人の精神的苦痛に対して支払われるものですが、モノが傷ついたということで支払われる事例はほとんどありません。
体が傷ついた、入院した、後遺症があるという場合はそのレベルによって慰謝料が算出されますが、モノが傷ついた場合には、その財産的価値で判断します。
例えば交通事故で車が凹んだ場合は、その修理費と車そのものの価値が下がってしまった格落ち分(修理費の2~3割程度が相場)を加害者が支払うことになります。今回の場合は車ではなく樹木ですから、木を売買したときの価格を基準に、枝を切ったことで下がった財産的価値が賠償の対称になります。
まず隣家は裁判所に申し出なければ、あなたに賠償を求めることはできません。しかも、もともと隣の敷地に枝がはみ出して迷惑をかけていた、何度も切るように言われていた、隣家自身も「植木屋をよんで切る」と言っていた、などの背景があります。実質的に損害を立証するのは難しいと思われます。
こういう隣近所の紛争については、私たち法律家も相談を受けて一番悩むところです。
裁判を起こしても双方が得られるメリットが極めて少なく、意地の張り合いなどで泥沼化してしまうことも少なくないからです。できることならご近所、お隣さんとは日頃から挨拶をして会話ができる仲にしておくことが望ましいでしょう。地震などの災害時には遠くの親戚よりご近所同士で助け合うことも必要になってくるのですから。
それでも運悪くトラブルが発生してしまった場合は、各都道府県の弁護士会で運営する「あっせん仲裁センター」に相談してみては。できれば今回のように自力救済をしてしまう前に相談することをおすすめします。