マイカー通勤禁止なのにマイカーでの通勤途上に交通事故に遭った。労災と認められる?
Q.
私は会社の経営者ですが、社員が自宅からの出勤途中に交通事故に遭いました。
わが社は建前上はマイカー通勤が禁止なのですが、郊外にあり交通の便が悪いので実際にはマイカー通勤に目をつぶってきましたし、会社の敷地にはそうした人のための駐車場もあります。こうした事故の場合は、労災保険の適用になるのでしょうか?
A.
まず労働災害(以下労災)について説明すると、業務上の事由又は通勤途上で、負傷したり病気になったり、障害を受けたり死亡してしまう災害のことを言います。
労働災害をカバーする労働者災害補償保険は、労働者の資格如何に関わらず、全ての労働者(アルバイト、パートタイマー、パートを含む)に適用されます。ただし、例外として公務員、船員には適用されません。
・マイカー通勤禁止でも労災保険は適用される
出金途上の交通事故が労働者災害補償保険の適用となる要件としては、労働者が住んでいるところと働いているところの間を、通常の方法で往復していたかどうか、ということになります。と同時に往復の行為が合理的な経路及び方法であることも必要とされます。合理的な方法による通勤というものの中には、電車やバスといった公共の交通機関はもちろんのこと、徒歩やマイカーも入るわけで、その労働者が普通どういう方法で通勤しているかが問題になります。
通勤方法は基本的に働いている者の都合によって選択されるべきもの。マイカー通勤を一律に禁止することに合理性はないと思われます。マイカーをつかわない場合の交通の不便がどの程度かということが考慮されることになります。今回の場合は、禁止はしていても事実上会社も黙認していたわけですから、労災が適用される可能性が高いといえます。手続きすれば、速やかに治療費や休業給付金が支払われることでしょう。
・従業員1000人以下の会社の労災保険料は一律
労災保険を適用すると、保険料が値上がりするのでできるだけ適用したくない、と思い込んでいる経営者がたまにいますが、従業員1000人以下の事業所では労災保険料は一律です。通勤途上や仕事中に遭った災害やけがに対して、従業員が安心して治せるように、速やかに労災保険の手続きを行いましょう。
1000人以下の労働者を雇用する事業所に対しては一定の割合で、保険料の割引、割増しが認められていますが、これは事故の多い職種の事業所には割増しを、事故の少ない職種の事業所には割引を行っているにすぎませんから、単純に労災保険を適用したら保険料が上がるわけではありません。
なお、マイカーの利用の形態については改めてきちんと決めておいたほうがいいでしょう。なぜならマイカー通勤しているときの交通事故で、加害者になってしまう可能性もあるからです。確かに通勤は仕事と関係ないのだから会社には責任がないのが原則ですが、場合によっては会社にも損害賠償責任が及ぶことがあります。マイカー通勤者に特別の手当てを出すなど、会社がマイカー通勤に積極的な態度を示していた場合などがそれです。もし、事故を起こした従業員が自動車保険(任意保険)に加入していなかったら、被害者は十分な保証を受けられません。その場合は会社に損害賠償を請求してくることになります。
また従業員個人がマイカーで業務中に事故を起こした場合には、ほとんど会社に責任が及びます。マイカーによる業務を禁止していても、実際に業務に使われている最中に事故を起こしてしまえば、なかなか会社の責任は免れません。会社は従業員の交通事故について、通勤中だけでなく仕事中についても、損害賠償責任を認識しておくべきです。