両親を一人で介護してきたのに残った家を相続することができない?
Q.
私は両親と同居し、父が倒れてから他界するまでは父の介護、母が倒れてからは母の世話をずっとしてきました。この度、高齢の母も見送ったのですが、これまで全く看病に来てくれなかった兄と妹がやってきて、ここに居座るなんてずうずうしい、許せないなどと言います。
私は両親の世話をずっとしてきましたし、両親も私がこの家に住むのが当然のように言ってくれていました。今更、この家を出て行く経済的な余裕もありません。どうすればよいのでしょうか?
A.
あなたのおっしゃることはもっともだと思いますし、大変よくわかります。私の考えでは両親が持っている財産を子どもが相続するという本来の必要性は、今は薄れてきていると思います。
昔は家業というものがあって、子供たちは、親のやっている事業を助け、その財産形成のため共に苦労しました。また、昔は平均寿命も短かったので、両親がなくなったときに残された遺族の扶養のために、残されたものがその財産を引き継ぐという必要性も強かったのです。ところが今や子どもたちの教育費は高くなり、家業を引き継ぐということも少なくなっています。
子供たちは親のスネをかじり、両親の財産を減らしこそすれ、増やすことについてはあまり役に立っていません。しかも高齢化社会になっていますから、両親が亡くなったからといって路頭に迷う遺族がいるというようなこともあまり見かけません。
仮に路頭に迷うとすれば、それは本人の努力が足りないのであって、親の責任でもなんでもありません。そんな現状を考えてみますと、両親の介護を一生懸命みた人に、財産がいくというのは、私は大変合理的なものだと思います。
・寄与分という制度を利用し割り増しで財産分与を
そうは言っても、ご両親の遺言か生前贈与がないと、一人の子供にだけたくさんの相続財産がいくということはほとんど期待できません。親の介護をただひたすら頑張ってきたあなたの努力が全く報われないようで残念ですが、あなたの願いを少しだけバックアップしてくれる「寄与分」という制度があります。
これは通常、親の財産を増やすために、あるいはそれを維持するために格段の努力をした、という場合に認められるものです。しかし最近はそれだけでなく、両親が人生の終焉を迎えたときに熱心に介護をした、面倒を見たというようなケースも「寄与分」の対象と考えられるようになってきました。ですから「寄与分」の主張をされるのが一番よいでしょう。それによって、あなたの相続割合は1~2割は多くなると思います。
お話によると、まったく看病をしなかった兄と妹がやってきて「家は長男が継ぐものだ」なんてことを言っているそうですが、これは現代では通用しません。あなたがご両親と一緒に住んできたのだとすれば、その家をあなたが相続して、兄や妹には他の財産を相続させるか、他の財産で足りなければ「代償金」といって、お兄さんや妹さんにそれ相当の金額を支払って、あなたがこの両親の家を継ぐことができるケースだと思います。
いずれにしても、これに関しては高度な法律知識と経験が必要ですから、専門の弁護士をたて、相談しながら解決していくことをおすすめします。
・代償金をローンで払い返済していくことも可能
もし財産が住んでいる家しかない、遺言もない、ということであれば、代償金を自分の持っている預貯金で支払うか、借金をしてそのお金で兄や妹に支払うか、ということになります。あるいはお兄さんに家を継がせて、あなたがお金でもらうという方法もあります。
通常、お兄さんと妹さんが受け取る財産は全体の2/3です。あなたの「寄与分」が認められたとしても、それが1~2割減る程度です。そうなると、相当な額を用意して支払わなければなりません。ローンで借りて支払っていけるかどうかが問題ですが、ローンを組むことは可能だと思います。
借金してでも家を守るか、家はあきらめてお金でもらうか。今後の人生設計を冷静かつ慎重に考えて、結論を出してください。