父が書いてくれた遺言状について
父の遺言状が後でトラブルの元にならないようにするためには?
Q 85歳になる父が自分で遺言書を書いてくれました。せっかく書いてくれた遺言なので、後でトラブルになるのを避けたいのです。どのようにすればよいでしょうか?
内容は「現在一緒に住んでいる自宅の土地と建物を私に、預貯金を弟と妹に譲る」というものです。この遺言状には頭書きに「遺言状」と書いてあり、日付、本人の署名、捺印もあります。父親の直筆で書かれているので形は整っていると思うのですが、果たしてこのままでよいのでしょうか。(62歳 男性)
遺言状としては有効だが公正証書遺言のほうがベター
A ご質問の内容を見るとお父さんの書かれた遺言状は、自筆証書遺言として完全なものであると思われます。質問の中には私とか弟、妹と書かれていますが、実際の遺言書の中にはきっと本名が書かれているのでしょう。自宅の土地・建物という書き方は少し抽象的ですが、特定が十分可能でしょうし、預貯金のすべてを弟と妹にというのであれば、何も書いてない限り預貯金の1/2ずつととれるので、遺言状として十分有効なものだと考えられます。
しかしこの遺言のままでは、お父さんがなくなられた後、土地建物をあなたの名義にするためには、他の相続人全員のハンコがないとできません。そのハンコが揃わない場合は、裁判を起こさなければならない、というような厄介なことになってしまいます。弟さん妹さんにとっても、銀行にこの遺言書を持っていっても預貯金をおろすことはできず、やはり相続人全員のハンコを下さい、ということになります。遺言書としてのカタチは一応整っているのですが、それだけでは遺言者の死後、その遺言がスムーズに実行されるというわけにはいかないのです。
このケースでは遺言書をスムーズに実行させる、というのが1つのポイントになると思います。一番いいのはお父さんにお話して公正証書遺言に書き換えてもらうようにすることです。
公正証書遺言というのは各地域にある公証人役場に所属する公証人に作ってもらう遺言のことです。手続きのために印鑑証明、住民票などと用意しなければなりませんし、利害関係のない立会い承認が2人必要だったり費用も数万円かかり、多少面倒なところがありますが、公証人というのは法律の専門家ですので、土地とか建物とかについては登記簿謄本に基づいて正確な記載をしてくれますし、預貯金についても銀行の口座などを特定してきちんと書いてくれるはずです。
そうするとお父さんが亡くなられた後、その公正証書遺言に基づいてスムーズに土地建物の登記を移したり、預貯金の払い戻しができるようになるので、あなたやご兄弟にとって安心です。
ちなみにお父さんがご病気などで公証人役場まで行けない場合は出張も可能。証人も公証役場で用意してくれます。
遺言書の筆跡を確定できる手紙などを残しておく
しかしお父さんがそういう面倒なことはやりたくない、というのであれば、とりあえず今の遺言書を大切に保存しておくようにしましょう。
遺言書が確かにお父さんの自筆で書かれたということを証明するためには、お父さんの筆跡が確認できる資料を整えておくと良いでしょう。85歳のお父さんが書かれた遺言書ですから、おそらく縦書きでしょう。その場合はきるだけ縦書きの筆跡のものを用意しておきます。お父さんが書かれた年賀状や手紙などが有効です。
また自筆証書遺言の場合は公正証書遺言と異なり、お父さんがなくなられた後、遅滞なく家庭裁判所に兼任の申立をしなければならないと定められていますので気をつけましょう。